ジーンズを履いた弁護士

クールビズの浸透によって法廷でもノーネクタイの弁護士を見かけることが多くなりましたが、ビジネスウェアに関して、我々の業界はまだまだ保守的です。

お堅い雰囲気や印象が重視されがちな士業では「きっちりしていること」が重要(あるいは重要であるべきだ)という風潮があります。特に裁判では、法廷という権威(裁判官という権威、ではありません。)に対し敬意を表し、礼儀を尽くすべきという共通した意識が実務家の中にあるため、ランニングシャツやサンダル履きの弁護士が弁論をするという場面には今のところ遭遇していません。中にはスーツスタイルにこだわらない破天荒な装いの人もいたりしますが、そういった場合、「狙った逆張り」であることが多く、自然体とは全く違っています。

ところが、私企業の方はかなり様子が異なっているようですね。

この4月から、パナソニック(旧松下電器産業)がジーンズやスニーカーでの勤務を解禁したようです。

『勝てるか ジーンズをはいたパナソニック』(日経新聞5月9日版)

リラックスできる職場環境・就労環境を整えるための施策ですが、「いい意味で気が抜ける。一つの視点にとらわれずぎずいろんなインスピレーションが湧く」といった社内の声に現れているように、プラスに働いているようです。同社の一部のオフィスでは(スタッフが執務する机の定位置を決めない)フリーアドレスも導入するなど意欲的な試みが取り入れられています。

「服装で生産性に影響があるのか?」という声も当然あります。

ですが、企業経営で重要視される、(けれども抽象的で捉え難い)「社内の風通し」や「企業風土」といった概念は、実はこういった一つ一つの具体的な施策や取り組み、エピソードの積み重ねです。特にパナソニックで、松下幸之助が造り、受け継がれてきた旧来のスタイルを大きく変えるという変化の試みは「就業中の動きやすさ」以上に大きな意味があります。

我々の業界にも、今、こういった流れが求められているように感じます。

Website弁護士中村真

神戸の弁護士・中小企業診断士の中村真(なかむらまこと)は交通事故案件、中小企業支援、事業再生・事業承継、税務争訟、相続案件等に注力しています。